11.06.14
阿波の国、上勝町のおばあちゃん達 その1
私の参加している6月の読書会で読んだ「イノベーションの知恵」野中郁次郎/勝見明共著(日経BP社刊)に紹介されていた ・過疎の町の軌跡 葉っぱがお金に化けた! 〜「つまものビジネス」でドン底から再生〜の章に、常識・限界を超える「アイデア、創造の源」を見ました。(その1)
同時にとても他人事とは思えない懐かしさ、愛しさを伴う深い共感を受けました。(その2)
章の内容は、徳島県勝浦郡上勝町の第三セクター「株式会社いろどり」(代表取締役 横石知二)の日本料理に彩どりや季節感を添える「葉っぱ」、つまもの話です。総面積の85%が山林、人口は約2000人、高齢化率約48%という過疎、高齢化が進む町ですが、190人もいるつまものの生産者の多くが平均年齢が70歳を超えるおばあちゃんたちで、年間1000万円以上売り上げる農家もいて、地域活性化で全国から注目されている事象を、五つのポンントと3つの本質的解釈として述べられている。リーダーとしての横石氏とその構成員である地域のおばあちゃん達の生き甲斐と創造的コラボレーション物語と言える。
ちなみにそのポイントは、
ポイント1 日頃から問題意識を持っていれば、アイデアのネタが引っかかる
1)人口流出 2)60歳以上の男集は、朝から酒、女性たちは嫁や誰かの悪口 3)異常寒波で主要産業のミカン全滅。 難波の料理店で女子大生が料理の脇についていた紅い紅葉を「かわいい」「持って帰ろう」などと言っている光景を見て、高齢者や女性でも山で出来る仕事がないものかと常に考えていた横石氏は瞬間閃きます。「そうだ、葉っぱを売ろう!」と。
ポイント2 葉っぱを売るのではなく、葉っぱが使われる場面を売る
1)おばあちゃん達に「私もやりたい」という意識を高めさせるため、都会の料亭の現場を見させ意識を変わらせる機会を作った。2)料理人が「それぞれのいわれ」「器との関係」「料理の種類」「自然のままより美くしく、手入れされているもの」等のプロの知恵を教えてくれ、このノウハウをおばあちゃん達に伝授した結果、使われている場面を読み、その場面を作り出せることが大切であると気づいていきました。
ポイント3 80歳のおばあちゃんがパソコンを駆使し、「仮説・検証」のサイクルを回す
1)セブンイレブンをモデルとした「あすの売り上げのため、発注に対しての「仮説」「検証」のPOS(販売時点情報管理)システム」の構築。
2) 「株式会社いろどり」と各生産者をパソコンネットワークで結び、会社から毎日品目別の市況、需要動向情報が送られ、これをもとに生産者は何をどれだけ出荷すれば収益が上がるかを判断した。
3)さらに、自分の売り上げ順位が何位なのかがわかるようにすることで一人の事業家としての自覚を持たせることでの好循環を生み出した。
4)通常より高い値の付く特別注文には、町の防災無線を使ったFAX網が使われ一斉に流され、
速いものが受注するシステムも導入した。
これらの商売の仕組みで、80歳のおばあちゃん達がものすごく頭を使い、思考力を高めていった。
ポイント4 個が光れば、全体が光る
パソコン画面には個人別販売実績が表示される。おばちゃん達は情報を読み、出荷品目・量を決める。タイミングを逃さないために使われる場面を想定し仮説をたてる。結婚シーズンなら縁起物をというように頭を使い続け何がよく売れそうかの流れを読む。無駄に出しては値が崩れるから控えるとか、パソコン上の市況を読み取って行動する等、まさに現役の事業家である。
ポイント5 モノ自体の価値は5%で、残り95%はコトづくりで決まる
地域活性化の成功は何故上勝町が達成出来たのか。葉っぱそのものを売ろうとしてもそれだけでは誰も買いません。IT化も環境を整えただけでは何も始まりません。その鍵は、95%自分たちで生み出すものです。おばあちゃんたちの努力はもちろん、指導者、地域の会社やいろいろなひとびとの無償の応援が大きく、こちらからいい情報を出せば、いい情報が帰ってくるという好循環が生まれました。結局、そのいい情報は、「ここに住んでいて良かった」と思えなければ出てこないということである。地域の活性化で重要なのはこのことと言える。
◆解釈編での
本 質1 一見関係のないモノを結びつけ、新たな知を生む「知の循環生態系システム 私たちを取り巻く環境には多様な知が埋め込まれており、その環境から知を取り込み、また放出していく中で、一見関係ないものが結びつき、新たな値が生まれていく循環を「知のエコシステム(生態系)」と呼ぶ。文書1.doc
本 質2 見えない文脈や関係性を見抜く力をつける
知のエコシステムを生み出し、コトづくりを行うには、一見なんの関係性のないものの間に文脈や関係性を見抜く能力が求められる。
たとえば、「料理店での紅いモミジ→大坂のビルを見て価値と結びつける発見」や「コンビニの商品棚を見て上勝の山の豊富な葉っぱの供給方法としてPOSシステムを採用することに結び付ける発想」などである。
本 質3 文脈を見抜くとタイムリータイムで最善の判断ができる
このほかにも葉っぱビジネスが成立していく過程で、リーダーの横石氏はタイムリーに見えない文脈を見抜いている。
1)葉っぱビジネスで実行性のあるマニュアルノウハウづくりだけでなく「人づくり」を行った。(おばあちゃん達を料亭に連れて行きプロの知恵をそのまま共有させた)
2)ある時から、トップダウン型リーダーからボトムアップを引き出すプロデューサーへと変身した。(おばあちゃんたちが自分で考えるようにするため)
3) おばあちゃんたちが自分で考え出荷の最適タイミングを得て、それが的確であれば市場の評価も上げられることからセブン・イレブンの情報システム(POS)を導入。
4)地域の活性化は、チーム力よりここでは個に焦点を当てた方がうまく行くと見抜き、個別評価の仕組みを採った。
5)そして一人ひとりの収益アップは、彩のブランド力を上げ、この利益が全体の利益に繋がるという「全体の中で自己認識できるシステム」をつくり上げた。(一即多、多即一)
以上が本章の概要である。リーダーシップの在り方やマンパワーの引き出し方、地域の活性化、創造力・アイデア開発等に実践応用できる書となっている。そして、お勧めしたい一冊でもある。
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